大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(く)1号 決定

本件抗告理由の要旨は、申立人は昭和二十年五月二十一日呂武第一八〇〇一部隊臨時軍法会議において結党(陸軍刑法違反)及び窃盗被告事件につき懲役三年に処する旨の刑の言渡を受け昭和二十年九月十三日陸軍軍法会議法第五百十一条第五号により刑の執行停止中の者であるが、東京地方検察庁検察官より昭和三十年九月二十七日東京地方裁判所に対し、前記併合罪のうち党結罪(陸軍刑法違反の罪)については昭和二十年十月十七日勅令第五百七十九号大赦令により大赦を受けたので、特に大赦を受けない窃盗の罪につき刑を定める決定の請求をなし、同裁判所は昭和三十年十二月十四日前記軍法会議が言い渡した刑の窃盗罪についての刑を懲役一年二月と定める旨の決定をした。しかし、終戦後十年以上を経過しその間営々として家事に従事して来た申立人に対し、既に消滅した筈の前記刑罰権の執行をすることは不当も甚しいものであるから、右決定の取消を求めるため本件抗告に及ぶと云うにある。

しかし原決定は、刑事訴訟法施行法第二条により旧刑事訴訟法の規定に従つて為されたものと解されるのであつて、かかる決定に対しては旧刑事訴訟法第三百七十五条第二項第四百五十九条により三日の期間内に即時抗告をなすべきものであり、本件即時抗告は法定の期間経過後にかかるものであることは記録上明らかであるから、本件は抗告の手続がその規定に違反したものとして刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四百六十六条第一項により棄却を免れない。(このことは現行刑事訴訟法の規定によるもその結論を異にしないのである。刑事訴訟法第三百五十条第三百四十九条の二第五項、第四百二十二条第四百二十六条参照)

因みに、本件に関する原裁判所の管轄権の有無につき検討するに、昭和二十一年五月十八日勅令第二百七十八号陸軍軍法会議法及び第一復員裁判所令第二復員裁判所令廃止の件附則第五項により同日以後廃止された軍法会議の後継裁判所は東京刑事地方裁判所と定められたのであるが(本件軍法会議は昭和二十一年七月十二日廃止)、右勅令はポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基くものであつて、昭和二十七年四月十一日法律第八十一号により前記勅令第五百四十二号は廃止せられ、同法第二項により同勅令に基く命令は別に法律で廃止または存続に関する措置がなされない場合においては、同法律(法律第八十一号)施行の日から起算して百八十日間に限り法律としての効力を有するものと定められたのであるから、法律によつて特別の措置がなされていない前記軍法会議等廃止に関する勅令附則第五項もまた前記法律第八十一号施行の日である昭和二十七年四月二十八日から百八十日を経過することにより失効し、同日以後軍法会議の後継裁判所については法律上その規定を欠くに至つたものと解せられるのである。従つてその後である昭和三十年九月二十七日に至り前記軍法会議の為した有罪判決に対し、刑法第五十二条による刑を定める決定を請求するについては、右事件につき適用せられる旧刑事訴訟法第十五条(現行刑事訴訟法第十六条)の規定による管轄指定の請求をなし、その指定を受けた上管轄裁判所にこれを請求すべきものと解するを相当とする。

しかるに本件記録を調査するも、本件についてはかかる管轄指定がなされたことを認めるに足りるものはないのであるから原裁判所が、前示請求につき、その実体に入り裁判をしたのは不法に管轄を認めた違法があるものといわなければならない。しかしながら、本件抗告は叙上のように不適法として棄却を免れないから、抗告裁判所たる当裁判所としては原決定の違法を匡救する途はなく、抗告人としては訴訟法上容認される別途の方法によりその救済を求める外はないものと解せざるを得ない。

(谷中 坂間 荒川)

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